■がん転移Q&A - 回答
Q10 転移が先に見つかった場合、元のがんはどのようにして探しますか?また、その治療は?

A 山上裕機
(和歌山医大第二外科・教授)
 日常診療において転移が先に発見されることは珍しくありません。腹部やそけい部にしこり(転移したリンパ節)が見つかったり、健康診断の腹部超音波検査で肝転移と思われる陰影が見つかったりすることもあります。その場合には、転移した臓器と解剖的な関係が深い臓器が原発巣である可能性が高いことから、そのような臓器を対象に検査をすることになります。
 肝転移であれば、胃がんや大腸がん、膵がん、肺がんなどを疑い、内視鏡検査CT(コンピュータ断層)検査を行います。腋窩や頸部のしこりであれば、食道がんや乳がん、肺がん、頭頸部がんなどを疑い、内視鏡検査やCT検査を行います。また、そけい部のしこりであれば、直腸がんを疑い、直腸指診や内視鏡検査を行います。採血での腫瘍マーカーの値も診断に大きく役立ちます。また最近ではPET(Positron Emission Tomography:陽電子断層撮影)といって、原発不明がんに対して、原発部位や転移部位を調べる検査方法があります。頭部は描出困難ですが、頸部からつま先までのチェックが可能です。通常はCTやMRI(核磁気共鳴検査)、PET、内視鏡検査の組み合わせでほぼ原発巣が確定できます。それでもはっきりしない場合は転移巣の生検を行い、病理組織型を確認することもあります。
 治療は、その原発巣のがんによって大きく異なります。原発巣が確認されれば、現在の転移状況を詳細に把握し(CTやPET、MRI等でチェックを行います)、治療前のステージ(病気の段階)を確認します。その原発巣の悪性度の高さと転移している臓器の状態により、最善の治療法を本人家族に説明して治療法を決定することになります。がんの種類によっては、根治をめざした切除を考えますが、初診時に転移巣がある場合にはかなり進行した状態であると考えられます。膵がんや肺がんなどでは切除不能と考えられ、抗がん剤治療や放射線療法を行うことになるでしょう。大腸がんは比較的悪性度が低く、初診時に転移巣があっても切除可能であれば根治も期待できます(5年生存率は約30〜40%です。)。乳がんや食道がんは切除不能であっても化学放射線療法がよく効けば根治する可能性があります。あきらめてはいけません。